通貨マフィアはかつてのポンド危機を夢見る

FOMCからのユーロドルの下ひげを1.263あたりを下に抜いて以降
その日はダウもかなりの下落幅を見せたが、

そこから形成された
再びの下落基調を再開させているドルストレート。

つまりは、ドル買いで、その筆頭にさらされているのがユーロドル。

ユーロの弱さを持って、ドルが買われ続け
あらゆる対ドルの通貨がまた下落を進める。

以前に述べたとおり、この下ひげを割らなければ、
ロングで入るつもりが、それができなかったがゆえに
本格的なロングには入れないでいるまま、今に至る。

欧州危機はいまだ解決の気配は見えない風で過ぎている。
ドイツのメルケル首相など、かなり強硬な態度を取っているが
彼女の発言を曲解するようで申し訳ないが
要するに、彼女はまだまだユーロ安にしたい、
という口先介入をしているようにしか見えない。

5月以降、変わることなく下げ続けるユーロであるが
そのきっかけが、当時はギリシャの選挙結果だったが
それを通過しても変わらぬ今を思えば
結局は、それはユーロを売るための単なる口実とされていただけとしか見えない。

今の情勢は、実はどのようにファンダメンタルズが変化しようとも
大口の投資家や、多くの通貨マフィア全般は
ユーロ崩壊へベットしている。

その筆頭がゴールドマンサックスであり、
そこに追随するのがその他投資銀行ヘッジファンドであろう。
ゴールドマンサックスに至っては
ギリシャがユーロに加盟する頃からその粉飾に荷担し、
現在のギリシャの状況への時限爆弾を当時から仕込んでいたに等しく
ユーロ崩壊の一里塚として、
まずはギリシャのユーロ離脱なり、
さらなる苦境なりをシナリオに描いているように思える。

現在の“ユーロ崩壊劇場”のエッセンスとして
スペインを追い込み、イタリアを威嚇し、
あらゆる国家を危機に追い込んででも
ユーロショートのベットを成功させたい連中は、

かつて、ジョージ・ソロスイングランド銀行を追い込んだという
逸話を、
ふたたび自分たちで新たな“伝説”として実現しようとしているのだろう。

当時のポンドの暴落よろしく
今回は、ユーロ暴落という事態が起こったときに
彼らの“伝説”は完成する。

そこで、どれだけの人々が辛酸をなめようが関係がない
自らの利益だけを追い、世界のファンダメンタルズなど関係なく
とにかく、ユーロを売り浴びせたいのだろう。

たしかにユーロという共同体は、どうしようもない連中で
アメリカのやばさに匹敵するほどの、悪そのものの連中である。
ただ、奴らはろくでもなく悪であるがゆえに滅びることはない。

さらに、当時といまとでは状況が異なる。

ソロスはじめ当時のグリードが挑んだ、ポンドの売り浴びせに対し
時のBOEはそれに徹底抗戦をした。

ユーロはイギリスよりも最低最悪の連中である。
当時のBOEとECBの違いは何か。

いまのECBには、BOEのような気概はない。
ユーロ圏の連中も、欧州を守る、という強い意志は感じられず
共同体の多くの同胞を危険にさらす綱渡りを行い続けている。
彼らは、ユーロの崩壊は避けたいが、
ユーロ安は望ましいと思っている。

それが現在の対応小出しの、世界への不信感キープという
何年にも亘る、彼らの戦略の源泉となっている。

そうしたヌエのような態度が、
ここ数年のユーロの乱高下を生んでいるように思う。

そうしたECBに暴落で挑んだとしても、新たな“伝説”は困難である。

私はユーロは崩壊しないと思っている。

崩壊しない共同体に暴落は可能性としては低い。

崩壊なきままの暴落はない。

となれば、自ずと現在の売り浴びせには限度がある。

すべてのポイントは、ユーロ問題が解決するか否かではなく

いま売り浴びせている者たちが、いつあきらめるか、のみである。

今後、いくらユーロ圏が解決の道筋を示したとしても
彼らが売りを諦めることはないだろう。

彼らが売りをあきらめるのは、彼らが巨額な損失を負った瞬間のみである。
つまり、ファンダメンタルズの変化ではなく
相場のレートが、彼らの想定するラインを大きく上抜いてしまったときに
彼らは損切りという名の、あきらめのトリガーを引く。

そうなるためには、彼らに相対する勢力が買いを大きくカバーせねばならない。

その勇気ある行動を誰が先んじて行うか、
ということはいま明言することはできないが、
そういう日は近い将来、訪れる、と私は思っている。

そのとき、多くの投機筋は巨額の損失を計上することとなり、
それもまた金融市場全体には幾分かの傷を与えることだろう。

通貨マフィアの所行は、どちらにしても世界にとって迷惑千万である。