ドル円の上昇はまだはじまったばかりか…私はむしろ米株の下落がはじまったばかりと思う。

円売り一色である。

なかでもドル円が強い。

どれだけ押されても、
それを新たに押し目買いのロングとされていくように
その下落値幅を吸収しながら、それを終えれば、
ふたたび、みたび、よたび、ごたび…
といった具合に高値を更新していく。

こちらは相変わらず、まだ円安転換を信じていないが
いま相場参加者のほとんどが
円を売っているような雰囲気である。

あらゆるオシレーター
無茶苦茶な買われすぎを示しても
関係なくロングの連打が起こる。

ドル円の強さは、あらゆる対円通貨を押し上げ
ユーロ危機に見舞われているユーロ円すらも
数ヶ月ぶりの高値に押し上げていくのだから

円ショートしている人たちにとっては
すべてがドル円さまさまである。

普段、死んだように動かない幻通貨・ドル円
現在の活躍っぷりは、
円売り勢を勇気づけ、
これまでのだらしなさを帳消しするほどである。

ここまでに円安が進むようだと、
民主党の人たちも立場がないだろう。

まるで、これまでの円高
民主党政権であったがゆえに続いていた、
つまり“民主党の存在”そのものが“円高要因”だった
と言わんばかりの上昇だからである。

まあ、各政策を見れば、そういう面も否めないが…。

いま円安相場と認めたくはないが
ドル高相場であるとは思う。

普段ならば、ドル円がふがいなくしか動かないので
各クロス円は、ユーロドルや豪ドルドルなど、
各ドルストレート通貨の下落にあわせ
引きずり落とされていくが

現在はドル円出来高がかなり上がっているように思うので、
各クロス通貨は、落とされるどころか
むしろ上昇しているような状況である。

ユーロは
対ドル買いのボリュームよりも
対円売りのボリュームの方が勝っている。

ただし、現在の状況は
短期的な相場から見立てて、やはり歪んでいると思う。

ドル円は、ほぼ米国債の長期利回りに動きが差許される。

現在は米株は下落気味である。
そうなると国債は上昇し、利回りは下落する。

これまでは、
利回りが低下すればドル円は下落する。
だから、米株価が上昇するとき
他のドルストレートがドル売りに走るところで
ドル円だけが上昇してきたのだ。

ドル円が株価がいくら下落しようと、
いま上昇をやめないということは、
ドル円が、ドルとのそうした関係性を脱したということを意味する。

各相対通貨の情勢を一切無視して
米国債利回りの上下動でばかり、主に反応する
という特殊性から脱したことを意味する。

そういうパラダイムシフトまで考えていけば
もはや、通貨間だけの関係性ではなくなってくる。

日米間の国家関係にまで関係してくる、と個人的には思う。

ともかく、ドル円は今後、継続的に上昇するとは思っていない。

そして、ドル円は一端調整が起こると
その調整は調整ではなくなることも多い。

一端、サポートを割れば、

現在の押しらしい押しもなく上昇してきたのと同様に
戻しらしい戻しもなく下落していくと考えていく。

それが、軸を持たない幻通貨ドル円の本来の姿である。

現在、ドル円はダブルボトムのトップに向けて奮闘している。

まさに教科書通りの展開なら、そのトップは84.15あたり、
これを抜ければ、
たしかにターゲットは一気に91円あたりまで跳ね上がる。

そこまでいけば、私も完敗である。

そこまでも待つ必要はない。

私が現在の円高への相場観を変えざるをえないレートは
現在の日柄見れば、83.4円あたりをオーバーしたときである。

そうなれば、教科書的にみて、上はそこから9円あたり先まで見据えられ
そうなれば、当然、84.15円などというのは途中の通過点に過ぎず、
ダブルボトムのターゲット91円よりも上、92円までが射程に入る。

最近、巷ではいまドル円の上昇はまだまだ序盤で、はじまったばかり、
のように思っているかのような発言が多い。

その真偽はともかくとして

私は、むしろ、米株の下落こそはじまったばかり、と考えている。

ドル円が今後、恒常的に序章を続けるためには
米株の上昇は欠かせない。

その意味で、いまドル円を買うものは
米株の今後に楽観している、ということである。

日米欧のなかで、米国がいま一番、景気がいいだとか、
米国はいま回復の途上にあるとか、

ドル円の上昇にあわせるように、
米楽観論もまた、いま市場を支配している。

“財政の断崖”などといわれる、米国の今後のリスクも
かる〜く乗り越えられるでしょう♪
といったように、楽観的である。

日本の先行きや米国の先行きなど誰もわからない。

しかし、いま市場のセンチメントは
総意が望む方向をより強めるために
そうした楽観で、市場を支配しようとしているのだ。

しかし、楽観や思惑で世界が決定できるなら
現在のような危機などあるわけがないし、
あったとしても、十分に予見できたことだ。

いまドル円のさらなる上昇を声高に吹聴している人々は
またものドル円の下落や、
さらなる超円高が生じた場合
どのように解説するのだろうか。

いまドル円が大きく下落する、
という見立てをたてている人はほとんどいない。

言っても、それはここまでの上昇の調整としての解説であり
単なる押しで、押してもいっても81円代、
80円代でもまだまだ押し目である、などという。

ここまで皆が総円安派となっている事態は異常である。